Routine Labo

GPT-6 Astra を実機で確かめる
——「AGI宣言」の、その下の行

2026年9月3日に OpenAI が GPT-6 Astra を発表し、翌4日に一般公開されました。 ARC-AGI-3 で 99.9%、ExploitBench で 100%。社長の Greg Brockman は 「generational leap」「個人的には AGI に到達したと思う」と語っています。 ——ただ、同じ発表ページの表を最後までスクロールすると、Claude が上のままの項目が3つあります。

GPT-6 Astra 実機検証。左に ARC-AGI-3 の 99.9%、右に総合知能指数の 61.2 対 65.7 を並べたサムネイル案
サムネ案
この記事(動画)で確かめること

1. GPT-6 Astra とは何か

2026年9月3日に一部の組織へ限定プレビューとして公開され、翌9月4日に ChatGPT の Plus・Pro・Business・Enterprise へ一般公開されました。 Pro 以上のプランでは「GPT-6 Astra Pro」も使えます。 ただし Enterprise は既定でオフで、管理者が有効化するまで選択肢に出てきません。

GPT-6 Astra の概要図。いつ出たか・何が新しいか・いくらか の3ブロック
図解:Routine Labo

基本仕様

項目
モデルIDgpt-6-astra
価格入力 $10 / 出力 $50(100万トークン)
キャッシュ読み $1 / 書き $12.50
Fast モード2倍速・2倍価格
コンテキスト1,050,000 トークン(最大入力 922,000)
最大出力128,000 トークン
知識カットオフ2026年4月30日
推論エフォートlow / medium / high / xhigh / max
出典:GPT-6 Astra Model | OpenAI API(2026-09-05 取得)
developers.openai.com

2. 本丸は「PC操作」

Astra の売りは知識量ではなく computer use——人の代わりに画面を操作して、 作業を最後まで進めることです。フォーム入力、CRM の更新、カレンダーの整理、 調査してドキュメントに要約、データを分析してグラフを作る、サイトを作って動作確認する。 公式が並べている例は、どれも「答える」ではなく「終わらせる」側にあります。

ベンチマークGPT-6 AstraGPT-5.6 SolClaude Opus 5Claude Fable 5
Agents' Last Exam59.3%53.6%55.5%48.7%
OSWorld 2.0(offline・partial)72.6%65.7%70.2%
ScreenSpot-Pro(ツールなし)92.7%76.9%87.3%
出典:GPT-6 Astra: A new generation of intelligence(2026-09-05 取得)
openai.com

数字以上に効くのが速度です。OSWorld 2.0 の遅延シミュレーションで、Astra は 1タスクあたり約40分。GPT-5.6 Sol の約75分に対して およそ47%短い時間で、スコアは上です。 Agents' Last Exam では Claude Opus 5 より出力トークンが約65%少ないとも書かれています。 「賢いけど遅い」ではなく「速くて正確」に寄せてきた、というのがこの世代の性格です。

3. 同じページを、下まで読む

ここまでは、いま出回っている速報とほぼ同じ話です。問題はこの先でした。 発表ページの表は Computer Use から始まって、Professional・Coding・Academic …と続きます。 一番下まで見ていくと、こうなっています。

公式表で GPT-6 Astra が Claude Fable 5.1 に負けている3項目の比較図
図解:Routine Labo
ベンチマークGPT-6 AstraClaude Fable 5.1Claude Fable 5Claude Opus 5
Artificial Analysis 総合知能指数 v4.1.161.265.762.163.1
Humanity's Last Exam(ツールあり)57.2%65.0%63.8%63.6%
Artificial Analysis コーディング指数 v1.467.067.268.161.2
出典:GPT-6 Astra: A new generation of intelligence(2026-09-05 取得)
openai.com

総合知能指数では Astra は4番手。Fable 5.1 だけでなく Opus 5・Fable 5 にも抜かれています。 Humanity's Last Exam(ツールあり)では、比較表に載っている中で Astra が最下位。 コーディングエージェント指数も 3番手で、最も高いのは Claude Fable 5 の 68.1 です。

ここが今回の芯

これは Anthropic の主張ではありません。OpenAI が自分の発表ページに載せている表です。 だから「盛った」も「都合よく切り取った」も成立しません。 そして、いま出ている速報動画は、この3行にほとんど触れていません。

どう読むか

否定したいわけではありません。数字を並べ直すと、性格がはっきり出ます。 Astra は「賢さの総量」で勝ちに来たモデルではなく、「画面を操作して仕事を終わらせる」方向に振ったモデルです。 だから computer use と長文脈と数学は総取りで、知識の難問と総合指標では Claude が上のまま。 ——「新しい方が全部上」ではなく「振った方向が違う」と読むのが正確だと思います。

ベンチマークGPT-6 AstraGPT-5.6 SolClaude Fable 5.1
ARC-AGI-399.9%7.8%
FrontierMath Tier 4 (v2)97.6%83.0%87.8%
Terminal-Bench Science 0.164.6%22.4%52.6%
Terminal-Bench 4.057.9%37.3%55.8%
MRCR v2 8-needle 512K–1M96.3%73.8%
出典:GPT-6 Astra: A new generation of intelligence(2026-09-05 取得)
openai.com

4. 1円も払わずに、フラッグシップを回す

API の実売は入力 $10 / 出力 $50。GPT-5.6 Sol($4 / $20)の 2.5倍です。 正直、検証のために毎回これを払いたくはありません。 ——ところが Codex CLI(ChatGPT のサブスク枠)から gpt-6-astra がそのまま動きます。 自分の環境では、~/.codex/config.toml の既定モデルが最初から gpt-6-astra になっていました。

APIで払う場合とCodexサブスク枠で回す場合の対比図。設定を見る・実行する・レーンに足すの3ステップ
図解:Routine Labo

疎通を確認する(このままコピーして使えます)

codex exec -m gpt-6-astra --skip-git-repo-check "Reply with exactly this and nothing else: ASTRA_OK"

実行すると、ヘッダに model: gpt-6-astra / provider: openai / reasoning effort: high が出ます。2026年9月5日に実行した結果は ASTRA_OK・消費 7,674 トークン・API課金ゼロでした。

検証アリーナにレーンを1行足す

新しいモデルが出るたびに同じ課題で比較できるように、常設のローカル検証アプリを使っています。 adapters/models.json にこのブロックを足すだけで、比較の候補に入ります。

"gpt6-astra": {
  "label": "GPT-6 Astra(Codexサブスク枠)",
  "type": "codex",
  "cli_model": "gpt-6-astra",
  "cost": "subscription",
  "enabled": true,
  "timeout_sec": 7200,
  "concurrency": 1
},

足したら bash verify.sh を回して、レーン可用性テーブルに ✓ gpt6-astra が出れば準備完了です。

5. 同じ課題を、同じ条件で左右に並べる

ベンチマークの数字は他人が測ったものです。自分の手で確かめるために、 固定の検証コースを毎回投げています。ワンショット厳守・追加指示なし・プロンプトは一字一句変えないのがルールです。 今回は GPT-6 AstraClaude Fable 5.1 に、まったく同じ文字列を 11課題ぶん投げました。

下は代表として、毎回必ず出題している課題1(基準線)の全文です。

投げるプロンプト(全文)

【出力条件・厳守】
1. 出力は「単一のHTMLファイル」を1つだけ。file:// でダブルクリックして即動くこと。ビルド・サーバ不要。
2. コードは省略禁止。「// 以下同様」「...(省略)」は禁止。全文を書ききる。
3. 外部アセット(画像/音声/フォント/モデル)への参照は禁止。必要な素材は Canvas / WebAudio / コードで生成する。
4. 物理・ゲームロジックは固定タイムステップ 1/60秒 で更新し、描画と分離する(可変dtをそのまま積分するのは禁止)。フレーム落ち時はアキュムレータで補正(最大5ステップでクランプ)。
5. 乱数はseed固定のPRNG(xorshift等)。同じ入力列なら必ず同じ結果になる(決定論)。
6. 画面右上に常時HUDを出す: FPS / フレーム時間ms / 現在state / 主要デバッグ値。
7. F1キーで当たり判定(コリジョン形状・法線・接地フラグ)のデバッグ描画をトグルできる。
8. 起動時のコンソールエラーは0件であること。
9. 自動採点用に window.__GAME = { state, player, entities, step(n), reset(seed) } をグローバル公開する。
10. 最後に「仕様チェックリスト」を表で出し、各項目に ✅ / ❌ を自己申告する(嘘の✅は最も減点される)。

【お題】Canvas 2D のみ(WebGL・外部ライブラリ・CDN 全て禁止)で、横スクロール2Dアクションを作れ。1280x720。

必須仕様:
- プレイヤー移動: 加速度と減速度は別係数。最高速度あり。空中制御は地上の60%。
- 可変ジャンプ: ボタンを離した瞬間に上昇速度を半減。
- コヨーテタイム 80ms / ジャンプ先行入力バッファ 100ms。
- 落下速度は最大でも1フレームあたりタイル1枚を超えないよう、スイープ(連続)衝突判定で床を貫通させない。
- 衝突解決は X軸→Y軸 の分離解決。壁への貼りつき・床でのガタつきを起こさないこと。
- 一方通行床(下から通り抜け、上から乗れる。↓+ジャンプで降りられる)。
- 動く床: 乗っている間はプラットフォームの速度を継承し、離れた瞬間もその速度が残る。
- 敵2種(パトロール型 / 追尾型)。踏みつけで撃破、横接触でダメージ+ノックバック+0.8秒無敵(点滅)。
- カメラ: デッドゾーン + 進行方向の先読み(look-ahead) + スムージング。ステージ端でクランプ。
- タイルマップ3ステージ、コイン、ゴール、残機、リトライ、クリアタイム表示。
- 効果音はWebAudioで合成(ジャンプ/被弾/コイン/クリア)。

回すコマンド

python3 tools/run.py --label GPT6Astra初回 \
  --prompts kadai1,obby3d,odaiB,racing3d,gb_monster,smash3d,web3d,shooter3d,sns_app,infographic,tag3d \
  --lanes gpt6-astra,fable51-cli-write --runs 1

見るのはこの3点です。

  1. 起動時のコンソールエラーが0件か(F12 を開いて実物で確認する)
  2. 実際に遊べるか(見た目はできているのに操作すると動かない、が一番多い落とし穴)
  3. 自己申告の仕様チェックリストに嘘の ✅ が無いか

3つめが今回の芯と繋がります。公式のハルシネーションベンチは Astra 4.2%(GPT-5.6 Sol は 12.2%)。 「できていないのに ✅ を付けない」という改善が、実物でも出るのかを見ます。

6. 料金と、使う前に知っておくこと

モデル入力 $/1M出力 $/1MGPT-6 Astra 比
GPT-6 Astra1050
GPT-5.6 Sol420Astra は 2.5倍
Claude Fable 5.11050同額
Claude Opus 5525Astra は 2倍
出典:OpenAI 公式 API ドキュメント/Anthropic 公式価格表(2026-09-05 取得)
developers.openai.complatform.claude.com

Claude Fable 5.1 と同じ値段で、総合知能指数は Fable 5.1 が上。 つまり「高い方が偉い」にはなりません。用途で選ぶしかない、というのがここでの結論です。

つまずきやすい3点

  1. Enterprise は既定でオフ。管理者が有効化するまで選択肢に出てきません。
  2. サイバー系の高度なタスクは、現時点では拒否されます(PoC exploit の作成など)。 OpenAI Daybreak で段階的に解放される予定と書かれています。
  3. 推論の過程が見えにくくなりましたrecurrent depth という新しい手法で 思考の連鎖の一部または全部が隠れます。OpenAI 自身が 「Astra の書かれた推論は Sol より監視しづらい」と公式に明記しています。
3つめは弱点というより「扱い方が変わる」話だと思っています。 エージェントに任せるときは、途中のログを読んで安心するのではなく 成果物を機械で検証する設計に寄せる。結局それが一番確実です。

逆に、安全性の数字は大きく良くなっています(低いほど良い)。

指標(低いほど良い)GPT-6 AstraGPT-5.6 Sol
内部 computer use 安全ベンチ2.4%22.0%
内部 ハルシネーションベンチ4.2%12.2%
ExploitGym ハニーポット0.0%48.2%
権限外へ踏み出した割合(Hugging Face 事件由来の評価)0%48%
出典:GPT-6 Astra: A new generation of intelligence(2026-09-05 取得)
openai.com

7. まとめ:乗り換えではなく、使い分け

用途別の使い分け表。PC操作・長文脈・数学は GPT-6 Astra、知識の難問は Claude Fable 5.1
図解:Routine Labo
やりたいこと選ぶ根拠
PC・ブラウザを操作させるGPT-6 AstraOSWorld 72.6%・約47%時短/ScreenSpot-Pro 92.7%
50万トークンを超える長文脈GPT-6 AstraMRCR 512K–1M で 96.3%(Sol 73.8%)
数学・研究の難問GPT-6 AstraFrontierMath Tier4 97.6%/Terminal-Bench Science 64.6%
知識系の難問・総合的な賢さClaude Fable 5.1総合指数 65.7(Astra 61.2)/HLE 65.0%(Astra 57.2%)
コーディングエージェントほぼ互角Fable 5 68.1 / Fable 5.1 67.2 / Astra 67.0
とにかく安く済ませるGPT-5.6 Sol$4/$20=Astra の 1/2.5

「AGI が来た」の一言で片付けるには、表の中身が複雑すぎました。 少なくとも今日の時点では、画面を操作させるなら Astra、じっくり考えさせるなら Claude。 そしてどちらも、自分の実際の作業で1本試してから決めるのが早いと思います。