実機検証 / 2026.08.01

文字起こしAIはどれを使えばいいか — 13社を同じ音源で測って、用途別に決めた

2026年は文字起こしAIの当たり年でした。OpenAI・Microsoft・Google・Deepgram・Mistral・xAI・Alibaba…半年で10本以上。 測る道具を自作して、同じ音源を13社に流しました。 字幕・議事録・ブログ化・大量処理、それぞれの答えを出します。

Routine Labo / 動画の補足資料(前編=録音済みの音声をテキストにする) / 実測日 2026年8月1日
文字起こしAI 13社 実機検証
13社の文字起こしAIを同じ音源で実測しました

結論を先に

012026年は音声AIの当たり年だった

半年でこれだけ出ています。各社バラバラのタイミングで出すので、気づいたら選択肢が3倍になっていました。

時期モデル提供
2026-02-05Voxtral Transcribe 2(Realtime版はApache 2.0のオープンウェイト)Mistral AI
2026-02-10Qwen3 ASR Flash(52言語・オープンソース系)Alibaba
2026-03Scribe v2 Realtime(150ms・30言語)ElevenLabs
2026-04-18Grok STT 1.0(単語タイムスタンプ+話者分離+500MB)xAI
2026年MAI-Transcribe 1.5Microsoft
2026年Chirp 3Google
2026年Parakeet TDT 0.6B v3(超高速・軽量)NVIDIA
2026年Gemini 3.6 Flash / 3.5 Flash-Lite(音声理解・無料枠あり)Google
2026-07Melia-1(14モデル中1位と報告)Speechmatics
2026年Universal-3.5AssemblyAI
2026-07-28GPT-Transcribe / GPT-Live-TranscribeOpenAI

7月28日にOpenAIが出したのは2本で、用途で分かれています。録り終わった音声なら $0.0045/分、 喋りながらなら $0.017/分。ここを間違えると3.8倍払うことになります。 この記事では前者だけを扱います(ライブは後編で1本使います)。

2つのモデルの使い分け
録音済みなら安いほう、喋りながらなら高いほう

02測る道具から作った

1つずつcurlで叩いて目で比べる、というのはやっていられないので、測定ツールを自作しました。 音声や動画をドロップすると全モデルへ同時に流し、精度・料金・返ってくるものを1画面に出します。

自作ツール音声モデル検証アリーナ

正解のテキストは自分で耳で書き起こしています。ここを手抜きすると、 どのモデルが良いかの判定がまるごと狂います。

03実測 — 13社を同じ音源で

自分の過去動画から、わざと厳しい40秒を切り出しました(固有名詞・数字・英語混じり)。 全部で 17本まわして6円です。

モデル提供CERコスト(40秒)秒数
1MAI-Transcribe 1.5Microsoft6.72%$0.0040
1Nova-3Deepgram6.72%$0.0029
3Gemini 3.6 FlashGoogle10.92%$0(無料枠)
3Chirp 3Google10.92%$0.0107
5GPT-4o Transcribe DiarizeOpenAI12.61%$0.0040
6Voxtral Mini TranscribeMistral20.17%$0.0020
8Qwen3 ASR FlashAlibaba25.21%$0.0014
9Whisper turbo(ローカル)28.57%$0
11Whisper turbo(Groq)Groq31.93%$0.0004
13whisper-1OpenAI36.13%$0.0040
14Grok STT 1.0xAI51.26%$0.0011
15Parakeet TDTNVIDIA148.74%$0.0010

順位そのものより、中身を見たときの発見のほうが大事でした。

数字の裏側順位表だけ見ると間違える

正直に1回測っただけでは順位は決まらない

同じモデル・同じ音源でも、実行のたびに数字が動きます(Gemini は 11.76% → 31.93% → 10.92%)。 1回測って「最強はこれ」と言うのは危険です。 OpenAIの公式ドキュメントにも「代表的な音声で自分でベンチマークしろ」と書かれています。

04用途A — 動画の字幕・テロップを作る

字幕には「どの言葉が何秒に喋られたか」が要ります。本文テキストだけでは字幕になりません。 そこで新しい GPT-Transcribe に単語タイムスタンプを要求してみると、返ってきたのはこれでした。

OpenAI からの応答
response_format 'verbose_json' is not compatible with model 'gpt-transcribe-api-ev3'.
Use 'json' or 'text' instead.

返ってこない、ではなく、要求した時点で弾かれます。 つまり GPT-Transcribe で字幕は作れません。

そして測ってみて分かったのですが、タイムスタンプを返すモデルは実は少数派でした。 今回の13社のうち、返すのは5本だけです。しかもその中でいちばん精度が良かったのは、有料上位ではなくローカルのWhisperでした。

字幕に使える
5 / 13
タイムスタンプを返すモデルはこれだけ
その中の最良
$0
ローカルWhisper(28.57%)。外に出さなくて済む
長い音声なら
500MB
Grok STT。他は25MB上限で分割が要る

僕の結論:動画編集の字幕は、ローカルWhisperのままで良い。 $0で、音声を外に出さずに済みます。ここを乗り換える理由は今のところありません。

字幕の判定
字幕はタイムスタンプが要る=選べるモデルが一気に絞られる

05用途B — ブログ記事にする・要約する

この用途で要るのは固有名詞と数字の正確さです。タイムスタンプは要りません。 今回の音源には claude-opus-5 というモデルIDが出てくるのですが、ここで差が出ました。

モデル出力
GPT-Transcribe(用語を先に渡した)claude-opus-5 / Claude Opus 5
Nova-3claude-opus-5
Voxtralcloud-opas-5
GPT-4o Diarizecrudo-opas-5
Grok STTクロードハイフンオーパスハイフンファイブ

GPT-Transcribe だけが3つの固有名詞を全部当てました。理由は「先に言っておける」からです。 文字起こしの前に、出てくる用語を渡せます。会議の前に「今日は〇〇の話です」と共有するのと同じで、 人間に効くことはAIにも効きます

用語を先に渡す
r = client.audio.transcriptions.create(
    model="gpt-transcribe",
    file=f,
    prompt="AIモデルのレビュー動画。APIの料金とモデルIDの話が出てくる。",
    keywords=["Claude Opus 5", "claude-opus-5", "API"],
    languages=["ja", "en"],
)

ただしこの用途の答えは「まず無料枠を試す」です。Gemini Flash が10.92%で、 $0.0107のChirp 3と同着、有料のOpenAI Diarize(12.61%)より上でした。しかも$0です。 固有名詞が特に多い仕事のときだけ、用語を渡せる GPT-Transcribe に払う価値があります。

先に言っておくと精度が上がる
固有名詞を先に渡せるかどうかが、そのまま精度差になる

06用途C — 会議・打ち合わせの議事録

議事録には話者分離(誰が喋ったか)が要ります。ここには落とし穴が2つありました。

実測で踏んだOpenAIで議事録を作るときの2つの壁

一方 Grok STT はフラグを1つ足すだけで、話者ラベルと単語の秒数が同時に返ってきます。 議事録を作るなら、ここは差が大きいところです。

話者分離+タイムスタンプを一度に
curl -X POST https://api.x.ai/v1/stt \
  -H "Authorization: Bearer $XAI_API_KEY" \
  -F file=@meeting.m4a -F language=ja -F diarize=true
落とし穴
25MB上限・タイムスタンプ・話者分離=つまずくのはいつもこの3つ

07用途D — 大量の音声を安く回す

インタビュー、講義、過去アーカイブ。1時間の音声を何本も回すなら、見るのは単価と上限です。

使うもの1時間あたり備考
ローカルWhisper$0時間はかかるが無制限・外に出さない
Groq Whisper turbo$0(無料枠)1日2,000回・7,200音声秒/時=事実上使い放題
Gemini Flash$0(無料枠)1日1,000回級
Grok STT$0.10500MBまで一括投入できる
Nova-3$0.26精度重視
GPT-Transcribe$0.27用語ヒントが効く

Groq は 40秒の音声が0.9秒で返ってきました。しかも無料枠の中です。 ここを知らずに月額を払うのは、正直もったいない。

08いくら払うべきか — 費用は4層に分かれる

使うもの費用
① ローカルWhisper large-v3-turbo(whisper.cpp)$0・音声を外に出さない
② 無料枠Gemini Flash / Groq Whisper枠内なら $0
③ 直接契約OpenAI(GPT-Transcribe ほか)60分で $0.27〜0.36
④ ゲートウェイOpenRouter で Microsoft・Deepgram・Mistral・Google・Alibaba・xAIキー1本・従量

実用的なのはです。各社と契約すると、使わない月も基本料を払うことになります。 OpenRouter ならキー1本で13モデル。今日の検証も、全部で6円でした。

注意チャージの手数料

クレジット購入時に 5.5%+最低$0.80 かかります。$5だと実質16%になるので、 入れるなら$10から。キー単位で使用上限を設定できるので、事故防止に必ず設定してください。

09まとめ — 用途別の早見表

やりたいこと使うもの費用理由
動画の字幕・テロップローカルWhisper$0タイムスタンプが要る。精度も上位陣と大差ない
長い音声を丸ごと字幕にGrok STT$0.10/時500MBまで一括(他は25MB)
ブログ化・要約Gemini Flash(無料枠)$0実測3位。足りなければ Nova-3
固有名詞が多い原稿GPT-Transcribe$0.27/時用語を先に渡せるのはここだけ
会議の議事録Grok STT(diarize)$0.10/時話者+秒数が一度に返る
大量処理Groq Whisper(無料枠)$01日2,000回・0.9秒で返る
ライブ字幕→ 次回GPT-Live-Transcribe ほか

「最強のモデル」を探すのはもうやめました。 用途ごとに要るものが違うので、用途で選ぶ。そして多くの工程は無料枠で足ります

費用の4層
まず①②で足りるか試す。足りない工程だけ③④に払う