実機検証 ・ Routine Labo

Claude Opus 5 実機検証
指示を8割消したら、逆に速く正確になった

2026年7月24日にリリースされた Claude Opus 5。注目すべきは性能そのものより「引き算」です。Anthropic は自社の Claude Code から指示文の80%以上を削除し、それでも性能は落ちませんでした。この記事では、その理由を公式ドキュメントで確認したうえで、実際に設定ファイルを削って前後を実測した結果をまとめます。

Claude Opus 5 実機検証 — 指示を8割消したら、逆に速く正確になった
Claude Opus 5 実機検証

SECTION 01

Claude Opus 5 とは — 値段が1円も変わっていない

Anthropic が 2026年7月24日に公開した最新モデルです。モデルIDは claude-opus-5。想定される主戦場は、コード生成、パソコン操作の自動化、そして数時間級の自律作業です。

今回いちばん分かりやすい変化は、実は性能ではなく値段が動いていないことでした。100万トークンあたり入力5ドル、出力25ドル。これは前世代の Opus 4.8 とまったく同額です。上位モデルの Fable 5 は入力10ドル・出力50ドルなので、その半額にあたります。

モデル入力 / 100万トークン出力 / 100万トークン
Claude Opus 4.8(前世代)$5$25
Claude Opus 5$5$25
Claude Fable 5(上位)$10$50

出典: platform.claude.com — Pricing

そして視聴者にとって一番効くのはここです。Claude Max では新しい標準モデル、Claude Pro では使える中で最も高性能なモデルとして提供されます。Claude Code と Claude Cowork でも使えます。つまり Pro / Max を契約していれば、追加課金なしで今日から使えます。

地味だが効く仕様
コンテキストは 1Mトークンが既定かつ最大で、小さい版は存在しません。しかも長文の割増料金がありません。公式は「90万トークンのリクエストも9千トークンと同じ単価」と明記しています。ナレッジカットオフは 2026年5月(Fable 5・Sonnet 5 は 2026年1月)。
ただし落とし穴が1つ。4.7以降のトークナイザは同じ文章で約30%多くトークンを消費します。「1Mだから安心」とは言い切れません。

SECTION 02 ・ 本題①

Anthropic が、自社の指示の8割を消した

ここが今回の主題です。Anthropic は Claude Code のシステムプロンプト、つまり「AIにこう振る舞ってほしい」と書いていた指示文を、Opus 5 と Fable 5 向けに80%以上削除しました。そしてコーディングの評価スコアに、測定できる低下はありませんでした。

これは「機能が増えました」というアップデートではありません。指示を減らせるようになったというアップデートです。

ツール利用時に自動で足される指示文のトークン数 — Opus 4.7が675、Opus 4.8が290、Opus 5が286
図解:Routine Labo

言葉だけでなく、課金される数字としても裏が取れます。ツールを使うときにAPIが自動で追加するシステムプロンプトのトークン数は、次のように減っています。

モデル自動追加されるトークン数
Claude Opus 4.7675
Claude Opus 4.8290
Claude Opus 5286(4.7比 −57%)

出典: platform.claude.com — Pricing(ツール利用トークン表)

公式が名指しで「削除しろ」と言っている指示

公式のプロンプトガイドには、消すべき指示が具体的な文言で挙げられています。

理由は明快です。Opus 5 は言われなくても自分で検証するため、これらを残すと過剰な検証でトークンを無駄に消費します。そして削っても品質は落ちない、と公式が明言しています。

プロンプトの常識が反転している
これまで「自己チェックを入れなさい」はプロンプトの定石でした。このモデルではそれが逆効果になります。もう一つ、方向が反転した点があります。Opus 4.8 はサブエージェントを使わなさすぎたので「もっと委譲しろ」と書き足していた人が多いはずですが、Opus 5 は逆に使いすぎます。その指示も消す対象です。

実演:自分の設定ファイルを削る

実運用している CLAUDE.md を開いて、赤ペンで削っていきます。削る前と削った後で、同じお題を1回ずつ流し、所要時間・出力トークン・結果を並べます。

残す指示消す指示
AIが知りようのない事実と制約
ファイルの場所/命名のルール/やってはいけないこと/自分の環境固有の情報
AIの振る舞いを矯正するための指示
検証しなさい/確認しなさい/ダブルチェックしなさい/丁寧にやりなさい

SECTION 03 ・ 本題②

effort のつまみを、どこに回すのが得か

Opus 5 には強さのつまみが5段階あります。low / medium / high / xhigh / max。API・Claude Code とも標準は high です。

ここで推奨が変わりました。Opus 4.8 や 4.7 では「コーディングなら xhigh」と案内されていたのですが、Opus 5 では「まず標準の high から始めて、要求が厳しいときだけ xhigh へ上げる」に変更されています。

effortは5段階。標準はhigh。highとmaxの差はわずか114
図解:Routine Labo

第三者測定(Artificial Analysis の AA-Briefcase=エージェント型の知識労働評価)のスコアを見ると、その理由が分かります。

effortElo備考
low1223
medium1470
high(標準)1606max より出力トークンが約33%少なくて、他社の全モデルを上回る
xhigh1693max より15%少ないトークンで他社の全モデルを上回る
max1720

出典: Artificial Analysis(AA-Briefcase)/ Claude Opus 5 System Card

high と max の差は114しかありません。それなのに max は出力するトークンが大きく増えます。だから標準の high のままで十分なことが多い、という話です。公式も「low / medium でも品質が落ちにくいので、コストとレイテンシの主要なコントロールとして積極的に使え」と書いています。

いちばん多い誤解
effort が変えるのは「どれだけ考えるか」であって「どれだけ喋るか」ではありません。下げても返答は短くなりません。出力を短くしたいなら、プロンプトで直接そう言うしかありません。ここを取り違えている解説記事がかなりあります。

SECTION 04

公式の主張を、自分のコースで答え合わせする

得意なのはエージェント作業

Anthropic のシステムカード(表8.1.A)から、勝っている指標を並べます。

ベンチマークOpus 5Opus 4.8Fable 5GPT-5.6 Sol
FrontierBench v0.143.318.733.737.5
OSWorld 2.0(パソコン操作)70.655.766.162.6
ARC-AGI-3(初見の問題)30.21.5—7.8
Zapier AutomationBench(業務自動化)26.017.017.418.1
GDPval-AA v2(知識労働・Elo)1861159317471736

出典: Claude Opus 5 System Card(表8.1.A)/max effort・5試行平均

いちばんおいしいのは ARC-AGI-3 です。これは「初めて見る問題を解く力」を測るもので、1.5% から 30.2% へ、およそ20倍に跳ねています。世代でここまで動いた指標は他にありません。

もう一つ、Zapier AutomationBench の見方が面白いところです。Opus 4.8・Fable 5・GPT-5.6 Sol が17〜18%で団子になっているのに、Opus 5 だけ 26.0%。業務自動化が本命だと分かる一枚です。

全部勝っているわけではない

ここを隠すと嘘になるので出します。

ベンチマークOpus 5勝っているモデル
SWE-bench Pro79.2Fable 5(80.0)
DeepSWE v1.1(長時間の作業)68.8GPT-5.6 Sol(72.7)
ARC-AGI-290.4GPT-5.6 Sol(92.5)
Humanity's Last Exam(ツールなし)56.3Fable 5(56.5・ほぼ同点)

とくに長時間の自律作業は GPT-5.6 Sol のほうが上です。用途によって選ぶべきモデルは変わります。

自前の固定コースで実際に回した結果

新しいモデルが出るたびに同じ課題を投げている自作の検証コースがあります。7月25日から26日にかけて回した4課題の実測です。

課題Claude Opus 5Kimi K3
ブロックエディタ(Notion風)620秒 / 84.7KB1848秒 / 58.4KB
3Dアスレチック646秒 / 66.0KB769秒 / 30.2KB
10枚アニメスライド402秒 / 50.3KB781秒 / 43.3KB
縦書き原稿用紙485秒 / 28.5KB780秒 / 15.4KB
この数字の読み方
ファイルサイズは「長く書いた」というだけで、品質そのものではありません。だから実際に動かして確かめる必要があります。
なお各モデルは出力の最後に「仕様チェックリスト」を自己申告します。Opus 5 は縦書き・スライド・エディタではできなかった項目を正直に申告していましたが、3Dアスレチックだけは34項目すべて合格・失敗ゼロと申告していました。その申告が本当かどうかも、動かして確かめるところです。

歴代の時系列

同じ固定コースで積み上げてきた記録です。

世代日付モデル
第1世代2026-05-29Claude Opus 4.8
第2世代2026-06-14Claude Fable 5
第3世代2026-07-11GPT-5.6
第4世代—Grok 4.5
第5世代2026-07-26Claude Opus 5

2ヶ月でここまで来た、というのが自分でコースを固定していると見えてきます。

SECTION 05

切り替える前に見る3か所

切り替える前に見る3か所 — 思考モード標準オン、400エラー条件、利用枠が別枠
図解:Routine Labo

① 思考モードが標準でオンになった

Opus 4.8 では設定を書かなければ思考なしで走りました。Opus 5 は同じリクエストが思考ありで走ります。出力の上限は「思考+本文」の合計にかかるので、前世代で上限を絞っていた設定は途中で切れます。回避策は上限の見直しです。

② 思考オフと強さ xhigh / max は同時に使えない

組み合わせると400エラーになります。切るのではなく、強さを下げて調整します。公式も「多くのタスクで、同じコストなら思考ありで強さを下げたほうが高性能」と言っています。

おまけに怖い話がひとつ。思考を切るとツール呼び出しが「ただのテキスト」として出力され、エラーも出ないまま何も実行されないことがあります。

③ 利用枠が前世代とは別枠

Opus 4.x の枠が空くわけでも、引き継げるわけでもありません。本番を移す前に自分のティアの上限を確認してください。

おまけ:返答も成果物も長くなる

公式が「デフォルトの返答と書き出すドキュメントは前モデルより長い」と認めています。しかもeffort を下げても短くなりません。プロンプトで明示するしかありません。公式の推奨文言はこれです。

<tone_preference>Keep outputs reasonably concise.</tone_preference>

長いシステムプロンプトの末尾に置きます。ついでに、頼んでいない範囲までスコープを広げる傾向もあります。

公式が自ら認めている弱点
ハルシネーションが Opus 4.8 よりやや多いです。正答率は11%高いのですが、幻覚率も6%高い。
賢くなった=間違えなくなった、ではありません。確信度が上がったぶん、間違いも自信満々になります。数字の突き合わせは必ず自分の目で確認してください。

SECTION 06

使うべき人/まだ要らない人

こういう人判定理由
Claude Pro / Max 契約者今すぐ使う追加費用ゼロ。Max は標準モデル・Pro は最上位。判断すること自体がない
Opus 4.8 を API で使っている無条件で乗り換え価格・コンテキストが完全据え置きで性能だけ上がる。破壊的変更は上の①②だけ
Fable 5 を API で使っている用途で判断半額だが SWE-bench Pro は Fable 5 が上。長時間自走は GPT-5.6 Sol が上
コード生成が主戦場乗り換え妥当FrontierBench・OSWorld・Zapier で明確に上
大量のバッチ生成が支出の大半急がなくていい品質差より単価差が効く領域。安いモデルで足りる
セキュリティ研究(エクスプロイト開発)向かない公式が Mythos 5 に劣ると明記。安全分類器で拒否されることもある